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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

中里介山『大菩薩峠16』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 页

青空文庫

「ひとさらいみたようね」

「あれで、惜しい男なのだ、練兵館でも、あのくらい腕の出来る奴はないのだが、心術がよくないため、長州の勇士組から見放され、師匠篤信斎からも勘当を受け、そうして今はああして、亡者の体となって諸国をうろついて歩いている」

「悪党のようで、それで思いの外さっぱりしたところもありますのね」

「うむ――本来あれで一流の使い手なのだから」

「新お代官みたように、しつっこいいやなところはないけれども、でも気味の悪いこと、手足の冷たいこと、全くこの世の人のようじゃありません」

「自分でも亡者亡者と呼んでいる」

こう言って、二人は物蔭で私語き交していたが、

「あら、また、やって来ますよ」

一時、立ち止って、こちらを透して見ていたような仏頂寺が、またのっしのっしと草原を分けて来るので、福松はまた兵馬に一層深くしがみつきました。

なるほど、執念深い彼等のことではあり、異様な六感が働いて、ほんとうに我々のここにいるのを気取ったかな。もしそうだとすれば……兵馬はここでかえって機先を制して、こちらから身を現わして出て行ってみようかと思ったが、それは女にからみつかれていて、にわかに転身が利かない。