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だいぼさつとうげ

大菩薩峠19

中里 介山

中里介山『大菩薩峠19』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 页

青空文庫

蘭字といえば蘭字、英字といえば英字、ずいぶん怪しげな辞書ですが、辞書は辞書に相違ないし、それをふところにしていることによって、相当好学の新しい青年であることを認めて、青嵐居士が会話を進めました――

「君はドコで英学をやりました」

「越前の福井で……ホンのちっとばかり、いろはだけなんです」

「越前の福井――君は福井の人なんですか」

「エエ、福井が僕の郷里なんです」

「福井に英学の先生がいましたか」

「エエ、その、なんです……」

青年は、少々ドモリながら質朴に受け答える。なかなかいい気の青年だと、青嵐居士が見て取って、秋の夜の当座の話し相手とすることになりました。

二十五

「福井でも、一部の青年の中には、語学熱が相当盛んでございます」

「そうだろう、福井はあれでなかなか進取の気象に富んだところだ」

「我々の先輩に橋本景岳という人がございまして」

「なるほど――あれは天下の人材でしたね、惜しいことをしたものです」

「それから、熊本から横井小楠などいう先生も見えまして……」

「その事、その事、いったい春岳侯が非凡な殿様だから、人材の吸収につとめられる」

「そういうような感化で、一部の青年には、なかなか新知識の吸収慾が強いのでして、僕もそれにかぶれた末輩の一人なんですが、どうも思うようにいきません」