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だいぼさつとうげ

大菩薩峠2

中里 介山

中里介山『大菩薩峠2』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,601 字 · 387 页

青空文庫

がんりきは峠道を飛び下りる。お絹はそれと同じ方へ飛び下りる。駕籠屋は、ただ白刃の光を見ただけで疾うに逃げてしまいました。駕籠屋の逃げたのは駿河の国、がんりきお絹の逃げたのは甲斐の領分、双方ともに後をも見ずして逃げ去ったあとに、ひとり残る竜之助。

刀の血振いをして道標の柱へ手をかけてほっと一息。

やがて持っていた刀をそこへ投げ出すと斉しく、道標の下へ崩折れるように倒れて、横になって落葉の上へ寝てしまいました。

昨夜の雨がまだ降り足りないで、富士の頭へ残して行った一片の雨雲がようやく拡がって来ると、白根山脈の方からも、それと呼びかわすように雨雲が出て来る。それで、天気が曇ってくると富士颪が音を立てて、梢の枯葉を一時に鳴らすのでありました。

竜之助は道標の下に倒れて、昏々として眠っている間に、サーッと雨が降って来ました。時雨の空ですから、雲が廻ると雨の落ちるのも早い。

ちょうど雑木の蔭になったところで、いくらか雨は避けられるようになっているが、葉末から落ちる時雨の雫がポタリポタリと面を打つので竜之助が、うつらうつらと気がついたのは、あれから、やや暫らくの後のことでした。