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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
中里介山『大菩薩峠7』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 242,044 字 · 477 页
遊芸――なるが故に国境が無かった。吉田松陰は、これがために生命を投げ出し、福沢諭吉も、新島襄も、奴隷同様の苦しみを嘗め、沢や、榎本は、間諜同様に潜入して、辛くもかの地の文明の一端をかじって帰った時分に、柳川一蝶斎の一行は、悠々として倫敦三界から欧羅巴の目抜きを横行して、維納の月をながめて帰ることができました。しかし、粗漏なる文明史の記者は、こんなことを少しも年表に加えていないようです。
いわんや、この一行が大倫敦の真中で、日本大小手品を真向に振りかざしたこと、その鮮やかな小手先の芸当に、驚異の目をったロンドンの市民のうちに、十九世紀の偉人ジョン・ラスキンがあったことを誰が知っている。
更にまた、この十九世紀の予言者であり、文明史上の偉人であり、絶世の批評家であるラスキンが、この小技曲芸をとらえて、日本の文明を評論した無邪気なる誤謬と浅見とに、憤りを発する者が幾人ある。
青丹よし、奈良の都に遊んだこともなく、聖徳太子を知らず、法然と親鸞とを知らず、はたまた雪舟も、周文も、兆殿司をも知らなかった十九世紀の英吉利生れの偉人は、僅かに柳川一蝶斎の手品と、増鏡磯吉の大神楽と、同じく勝代の綱渡りと、玉本梅玉の曲芸とを取って、以て日本の文明に評論を試みている。