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だいぼさつとうげ

大菩薩峠7

中里 介山

中里介山『大菩薩峠7』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 242,044 字 · 477 页

青空文庫

というのは、ある女の声。

「そこを、ずっと突き当って行くと開き戸がある、そこが風呂場だ」

神尾が口で案内すると、女は心得たもので、ずっと教えられた通りに打通り、やがて帯を解く音。早くも風呂の蓋を取って、やわらかに湯を掻きまわす音まで聞えましたから、お吉は躍起の心持で、思わず台所を立って、そっと忍び足に風呂場の羽目からのぞいて見ますと、油の乗った年増ざかりの女の肌。

お吉がふるえた時に、廊下を渡ってくる神尾の声、

「お絹、風呂加減はどうじゃ」

二十二

風呂から上ったお絹が、まだ持ち運んだ荷物の散らかっている一間の中で、鏡台に向って、髪を直していると、いつか、そのうしろに立って、障子の外からのぞいている神尾主膳。

なんともいわないで、ただお絹の後ろから、鏡にうつる姿をながめている。お絹もまた、なんともいわないで、念入りに髪をいじっている。

鏡にうつるお絹の面に、わざとするような恥かしさ。頬から首筋、後ろへまわした手首までが、乳のように白い。

「お前は、いつになっても年をとらないね」

と神尾がいう。

「こんなに、お婆さんになってしまいました」

とお絹が答える。