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たいしゅうのちえ

大衆の知恵

中井 正一

「シナリオ」1951(昭和26)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,439 字 · 5 页

青空文庫

ことに、一体、日本の大衆とは何なのか。

日本は、世界が、一度も実験したことのない、歴史的実験を試みている。

それが島国であったからできたことであるが三百年にわたって、国を外国から断ち切って鎖でとざしてしまうことができたという、とんでもないことをやってのけたのである。

国の文化を、冷蔵庫の中に閉じ込んで、じいっと、そのままに三百年も、凍らせてみるという大実験をしたのである。

そこには二つの大きい問題がある。

一つはプラスとも思えること、一つは何といってもマイナスにしかすぎないことである。プラスといえるものは、三百年もの間戦争をせずに人間が生きてきたことである。このことから、妙な、凝った、ひねたものまでが、その美を追求し、手の込むのを何とも思わない遊びにまで発達した。ここに外国にさがせないものが発生した。雛人形の凝りに凝った儀式と、その大衆的遊びかた、あるいは、春は花見、夏は七夕、川開きの花火、明月にあとの月、菊に雪見にいたるまで、その衣裳まで、凝りに凝るという、上等なメロンにウィスキーを入れて四、五日冷凍したような、手の込んだ冷凍文化がここに三百年つづいていることは、何でもないことのようであるが、大変なことなのである。