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てんぐ
天狗
大坪 砂男
「宝石 七、八月合併号」岩谷書店、1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,545 字 · 19 页
常の如くさわさわと。――残された者の恰好のつかなさは、たとえ板敷は古く、吊されたランプは暗くとも思いや如何。心顔措く無し。咄!
三日間部屋に籠って思索に費した。今にして考えれば三分以上を必要としない簡単な計算に三日も要したとは、これを仏陀の智慧を借りて言えば、真如の月影が映るのには漣ほどの乱れがあってもならないそのためで、心緒のコロイドを沈澱させ理性の澄明を得るまでに随分無駄な時間と忍耐が払われたのだ。問題は決して二次的に複雑なものではなく、Xを理性としてYを感性として数式に示してみれば明瞭なように、それは二元一次方程式に過ぎない。従って、X、Yの答は各々ただ一つであり、一つに限る。
X=廉恥問題に関して、二つの相反する表象が同時に存在することは許されない。当方の観念は理法に適合し、喬子のそれは錯乱である。依って、喬子の固持する表象は抹消されねばならない。
Y=正誤を証明するためには、喬子がそれを示したことを恥辱と感じ、かく感じることに依って当方を侮辱しつつあるその形態は公衆の批判を受けねばならない。
畢りは、喬子の生命は奪われるべく、そのブルーマースを穿った下肢は白日の下に曝されるべき必要且充分な理由があるというのが唯一つの答案であった。