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あまくさしろうのようじゅつ
天草四郎の妖術
国枝 史郎
「ポケット」1925(大正14)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,401 字 · 17 页
「並んだ並んだお雛さまが」
老人は二人を眺め乍ら面白そうに手を拍ちましたが、猪口を掴むとつと前へ出し、
「さあさあ酒を注いでくれ」
「はい」
と娘は慣れた手つきで徳利を取って酌をします。
「さあさあ娘、立って舞い」
「はい」と云って立ち上り娘は舞をまい出しました。
黄色い澄み切った早春の月。藪蔭で啼いている寝惚鳥。生温かい夜の風。月光を砕き風に乗り翩飜と舞う長い袖。……娘の舞は今様と見え声涼しく唄い出しました。
春の弥生の暁に
四方の山辺を見渡せば
花盛りかも白雲の
かからぬ峰こそなかりけり
繰り返えし繰り返えし三遍まで娘は唄って舞い澄ます。
と見ると老人は眠っています。ゴロリと草の上に横になり軽い鼾さえ立てています。
「おや、お爺さんは寝入っているよ」
娘は急に舞を止め手を叩いて笑い出しました。
「こんな事はめったに無い。出した物をうっちゃって置いて寝入って了うなんて迂濶でしょう」
娘は面白そうに叫んだものです。
四
「ちょいとちょいと可愛らしい坊ちゃん」
斯う云い乍ら急に娘は四郎の側へ参りましたが如何にも早熟た物腰で四郎の手を堅く握りました。
「妾ね、貴郎を待っていましたのよ。