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あまくさしろうのようじゅつ
天草四郎の妖術
国枝 史郎
「ポケット」1925(大正14)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,401 字 · 17 页
「いや、あの時は面白かった」宗意軒は浩然と笑いました。「要するに俺の催眠術で彼奴の精神を眠らせて了い、いろいろ様々の形を見せ、彼奴をして天童じゃと思わせた迄さ。予想外に夫れが利いて、四郎め天童に成り済ましたのじゃからの。計画図にあたりと云うものさ」
「老後の思い出天下を相手に斯ういう芝居が打てたかと思うと、全く悪い気持はしないの」
「お互、小西の残党なのだが、憎い徳川を向うに廻わし是だけ苦しめたら本望じゃ」
「江戸で家光め地団太踏んでいようぞ」
「長生きするとよいものじゃ。いろいろのことが見られるからの」
「が、此度が打ち止めであろうぞ。後詰めする味方があるではなし」
「豊臣恩顧の大名共、屈起するかと思ったが是だけはちと当てが外れた」
「そうは問屋が卸ろさぬものじゃ。もう是迄に卸ろし過ぎている。ワッハッハッ」
「ワッハッハッ」
「ああ夫れでは此私は天の使いではなかったのか」
二人の話を立聞きしていた四郎時貞は余りの意外に仰天しましたが、次に来たものは絶望でした。
その絶望が劇しかったためか、転換した彼の性格が忽然旧に復して了い、一個白痴の美少年増田四郎となって了ったのは止むを得ない運命と云うべきでしょう。