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あまくさしろうのようじゅつ
天草四郎の妖術
国枝 史郎
「ポケット」1925(大正14)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,401 字 · 17 页
髪は角髪衣裳は振袖、茶宇の袴に細身の大小、草履を穿いた四郎の姿は、天の成せる麗質と相俟って往来の人々の眼を欷て別ても若い女などは立ち止まって見たり振り返って眺めたり去り難い様子を見せるのでした。
四郎は無心に海を見乍ら港を当て無く歩いていましたが不図砂地の大岩の周囲に多数の男女が集まって騒いでいるのに眼を付けますと、愚しい者の常として直ぐに走って行きました。
岩の上に老人がいて何か喋舌っているのでした。
白い頭髪は肩まで垂れ雪を瞞く長髯は胸を越して腹まで達し葛の衣裳に袖無羽織、所謂童顔とでも云うのでしょう棗のような茶褐色の顔色。鳳眼隆鼻。引き縮った唇。其老人の風采は誠に気高いものでした。
と、老人は一同を見渡しカラカラと一つ笑いましたが、
「これ集まったやくざ者共、何を馬鹿顔を為て居るぞ。いつもの芸当を見たいそうな。……ところが左様は問屋で卸さぬ。碌な見料も置いていかずに面白い芸当を見ようとするのは取も直さず泥棒根性。眼保養の遣らずぶったくりだ。そういう奴は出世せんぞ。まごまごすると牢屋へ入れられる」
斯う大口を叩いたものです。
しかし集まった見物人が別に怒りもしないところを見ると斯ういう調子には慣れているのでしょう。