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だざいおさむじょうしこう

太宰治情死考

坂口 安吾

「オール読物 第三巻第八号」1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,715 字 · 10 页

青空文庫

「角力はまだ二人しか死んどりません。福柳と沖ツ海、カイビャク以来、たった二人です。ワシラ、マコの血管を一つ一つピンセットでぬいて、料理屋の三倍も時間をかけて、テイネイなもんです。あたった時はクソを食べると治るです。ワシもしびれて、クソをつかんで、食べたら吐いて治りました」

角力というものは、落ちついたものだ。時間空間を超越したところがある。先日もチャンコを食いに行ったら、ちゃんとマコを用意してあり、冷蔵庫からとりだして、

「先生、マコ、あります」

「イヤ、タクサンです。ゴカンベン」

「不思議だなア、先生は」

と云って、チョンマゲのクビをかしげていた。

然し、角力トリは面白い。角力トリでしかないのである。角力のことしか知らないし、角力トリの考え方でしか考えない。食糧事情のせいか、角力はみんな、痩せた。三根山はたった二十八貫になった。それでも今度関脇になる。三十三貫の昔ぐらいあると、大関になれる。ふとるにはタバコをやめるに限る、と云うと、ハア、では、ただ今からやめます、と云った。嘘のようにアッサリと、然し、彼は本当にタバコをやめたのである。

芸道というものは、その道に殉ずるバカにならないと、大成しないものである。