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だざいおさむじょうしこう
太宰治情死考
「オール読物 第三巻第八号」1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,715 字 · 10 页
一般の方々にとって、戦争は非常時である。ところが、芸道に於ては、常時に於てその魂は闘い、戦争と共にするものである。
他人や批評家の評価の如きは問題ではない。争いは、もっと深い作家その人の一人の胸の中にある。その魂は嵐自体にほかならない。疑り、絶望し、再起し、決意し、衰微し、奔流する嵐自体が魂である。
然し、問題とするに当らぬという他人の批評の如きものも、決して一般世間の常態ではないのである。
力士は棋士はイノチをかけて勝負をする。それは世間の人々には遊びの対象であり、勝つ者はカッサイされ、負けた者は蔑まれる。
ある魂にとってその必死の場になされたる事柄が、一般世間では遊びの俗な魂によって評価され、蔑まれている。
文士の仕事は、批評家の身すぎ世すぎの俗な魂によって、バナナ売りのバナナの如くに、セリ声面白く、五十銭、三十銭、上級、中級と評価される。
然し、そんなことに一々腹を立てていられない。芸道は、自らのもっと絶対の声によって、裁かれ、苦悩しているものだ。
常時に戦争である芸道の人々が、一般世間の規矩と自ら別な世界にあることは、理解していたゞかねばならぬ。