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だざいおさむじょうしこう
太宰治情死考
「オール読物 第三巻第八号」1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,715 字 · 10 页
太宰の遺書は体をなしておらぬ。メチャメチャに泥酔していたのである。サッちゃんも大酒飲みの由であるが、これは酔っ払ってはいないようだ。尊敬する先生のお伴して死ぬのは光栄である、幸福である、というようなことが書いてある。太宰がメチャメチャに酔って、ふとその気になって、酔わない女が、それを決定的にしたものだろう。
太宰は口ぐせに、死ぬ死ぬ、と云い、作品の中で自殺し、自殺を暗示していても、それだからホントに死なゝければならぬ、という絶体絶命のものは、どこにも在りはせぬ。どうしても死なゝければならぬ、などゝいう絶体絶命の思想はないのである。作品の中で自殺していても、現実に自殺の必要はありはせぬ。
泥酔して、何か怪しからぬことをやり、翌日目がさめて、ヤヤ、失敗、と赤面、冷汗を流すのは我々いつものことであるが、自殺という奴は、こればかりは、翌日目がさめないから始末がわるい。
昔、フランスでも、ネルヴァルという詩人の先生が、深夜に泥酔してオデン屋(フランスのネ)の戸をたゝいた。かねてネルヴァル先生の長尻を敬遠しているオデンヤのオヤジはねたふりをして起きなかったら、エエ、ママヨと云って、ネルヴァル先生きびすを返す声がしたが、翌日オデンヤの前の街路樹にクビをくゝって死んでいたそうだ。