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「ダブックウ」ひょうりゅうき

「太平洋漏水孔」漂流記

小栗 虫太郎

「新青年」博文館、1940(昭和15)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,264 字 · 37 页

青空文庫

そうして間もなく、この“Nord-Malekula”を三人が出ていった。果実や泥亀の乾肉をしこたまこしらえて、また、独木舟にのり大洋中にでたのだ。しかし、今度は目的地もない。ただ、絶海をめぐって、孤島をたずねよう。そしてそこが食物の豊富な常春島であれば……。

太平洋漏水孔の招き

「オジチャン、これで坊やたちは、日本へいくんだね」

ハチロウは、外洋へでると大悦びだったが、そんなことを聴くと、キューネは鼻の奥がじいんと滲みるような思い、自分はドイツ、ナエーアはサモアへ……。いずれも帰心矢のごとしと云いながら、帰れない身だ。よくよく、おなじ運命のものがめぐり合わせたもんだと、ますますこんなことから結ばれてゆく三人。

独木舟、いま南東貿易風圏内にある。この雨桁附き独木舟にはひじょうな耐波性があって、むかしは、ハワイ、タヒチ島間六千キロを、定時にこの扁舟が突破していたといわれる。

「なんだか、赤道に近いようですわね」

とビスマルク諸島の北端を出てから三日目の午、ナエーアが、しばらく手をかざしながら水平線を見ていたが、そういった。

「どうして、分るね」

「ホラ、蒼黒い筋が水平線にあるでしょう。