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かのうせいのぶんがく
夫婦善哉
織田 作之助
織田作之助『夫婦善哉』。同一底本的分册已合并为一书。收入:可能性の文学、勧善懲悪。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,834 字 · 94 页
子薬で全快したという者が見当らなかった。
そこで、丹造は直営店の乾某がかつて呼吸器を痛めた経験があるを奇貨とし、主恩で縛りあげて、無理矢理に出鱈目の感謝状と写真を徴発した。これが大正十年、肺病全快広告としてあらわれた写真の嚆矢である。
ついで、彼は全国の支店、直営店へ、肺病相談所の看板を揚げさせると同時に、全快写真を提供した支店、直営店に対しては、美人一人あたり二百円、多数の医師に治療を受けたる者二百円、普通百円の割にて報酬を与える旨、通告した。……
これだけ、引けば、良いだろう。これだけでも十分、八百長さ加減はわかる筈だ。詳しく知りたければ「真相をあばく」の百六十四頁から百七十五頁までを見てもらおう。十一頁にわたり、支店や直営店がいかに巧妙に全快写真を探しあつめたかを、御丁寧に統計まであげて、素っ破ぬいている。
なお、同書百七十六頁から百七十九頁までには、全快写真の主が日ならずして、死んだとか、とくに死んでいる筈の病人が、どういう手落ちでか、百ヵ日当日の新聞広告の写真の上に生きかえって、おかげで全快してこんな嬉しいことはない云々と喋っているとか、些かユーモア味のある素っ破抜きをしてあるが、まさか、そんなことはなかったろう。