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めおとぜんざい

夫婦善哉

織田 作之助

「海風」1940(昭和15)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,643 字 · 61 页

青空文庫

「帰るとこ、よう忘れんかったこっちゃな」そう言って蝶子は頸筋を掴んで突き倒し、肩をたたく時の要領で、頭をこつこつたたいた。「おばはん、何すんねん、無茶しな」しかし、抵抗する元気もないかのようだった。二日酔いで頭があばれとると、蒲団にくるまってうんうん唸っている柳吉の顔をピシャリと撲って、何となく外へ出た。千日前の愛進館で京山小円の浪花節を聴いたが、一人では面白いとも思えず、出ると、この二三日飯も咽喉へ通らなかったこととて急に空腹を感じ、楽天地横の自由軒で玉子入りのライスカレーを食べた。「自由軒のラ、ラ、ライスカレーはご飯にあんじょうま、ま、ま、まむしてあるよって、うまい」とかつて柳吉が言った言葉を想い出しながら、カレーのあとのコーヒーを飲んでいると、いきなり甘い気持が胸に湧いた。こっそり帰ってみると、柳吉はいびきをかいていた。だし抜けに、荒々しく揺すぶって、柳吉が眠い眼をあけると、「阿呆んだら」そして唇をとがらして柳吉の顔へもって行った。

あくる日、二人で改めて自由軒へ行き、帰りに高津のおきんの所へ仲の良い夫婦の顔を出した。ことを知っていたおきんは、柳吉に意見めいた口を利いた。