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めおとぜんざい

夫婦善哉

織田 作之助

「海風」1940(昭和15)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,643 字 · 61 页

青空文庫

衣裳の裾なども恥かしいほど擦り切れて、咽喉から手の出るほど新しいのが欲しかった。おまけに階下が呉服の担ぎ屋とあってみれば、たとえ銘仙の一枚でも買ってやらねば義理が悪いのだが、我慢してひたすら貯金に努めた。もう一度、一軒店の商売をしなければならぬと、親の仇をとるような気持で、われながら浅ましかった。

さん年経つと、やっと二百円たまった。柳吉が腸が痛むというので時々医者通いし、そのため入費が嵩んで、歯がゆいほど、金はたまらなかったのだ。二百円出来たので、柳吉に「なんぞええ商売ないやろか」と相談したが、こんどは「そんな端金ではどないも仕様がない」と乗気にならず、ある日、そのうち五十円の金を飛田の廓で瞬く間に使ってしまった。四五日まえに、妹が近々聟養子を迎えて、梅田新道の家を切り廻して行くという噂が柳吉の耳にはいっていたので、かねがね予期していたことだったが、それでも娼妓を相手に一日で五十円の金を使ったとは、むしろ呆れてしまった。ぼんやりした顔をぬっと突き出して帰って来たところを、いきなり襟を掴んで突き倒し、馬乗りになって、ぐいぐい首を締めあげた。「く、く、く、るしい、苦しい、おばはん、何すんねん」