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めおとぜんざい
夫婦善哉
織田 作之助
「海風」1940(昭和15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,643 字 · 61 页
蝶子はおかしいほど機嫌とって、「英語たらいうもんむつかしおまっしゃろな」女学生は鼻で笑うのだった。
ある日、こちらから頼みもしないのにだしぬけに白い顔を見せた。蝶子は顔じゅう皺だらけに笑って「いらっしゃい」駆け寄ったのへつんと頭を下げるなり、女学生は柳吉の所へ近寄って低い声で「お祖父さんの病気が悪い、すぐ来て下さい」
柳吉と一緒に駆けつける事にしていた。が、柳吉は「お前は家に居りイな。いま一緒に行ったら都合が悪い」蝶子は気抜けした気持でしばらく呆然としたが、これだけのことは柳吉にくれぐれも頼んだ。――父親の息のある間に、枕元で晴れて夫婦になれるよう、頼んでくれ。父親がうんと言ったらすぐ知らせてくれ。飛んで行くさかい。
蝶子は呉服屋へ駆け込んで、柳吉と自分と二人分の紋附を大急ぎで拵えるように頼んだ。吉報を待っていたが、なかなか来なかった。柳吉は顔も見せなかった。二日経ち、紋附も出来上った。四日目の夕方呼出しの電話が掛った。話がついた、すぐ来いの電話だと顔を紅潮させ、「もし、もし、私維康です」と言うと、柳吉の声で「ああ、お、お、お、おばはんか、親爺は今死んだぜ」