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めおとぜんざい
夫婦善哉
織田 作之助
「海風」1940(昭和15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,643 字 · 61 页
それが律儀者めいた。柳吉はいささか吃りで、物をいうとき上を向いてちょっと口をもぐもぐさせる、その恰好がかねがね蝶子には思慮あり気に見えていた。
蝶子は柳吉をしっかりした頼もしい男だと思い、そのように言い触らしたが、そのため、その仲は彼女の方からのぼせて行ったといわれてもかえす言葉はないはずだと、人々は取沙汰した。酔い癖の浄瑠璃のサワリで泣声をうなる、そのときの柳吉の顔を、人々は正当に判断づけていたのだ。夜店の二銭のドテ焼(豚の皮身を味噌で煮つめたもの)が好きで、ドテ焼さんと渾名がついていたくらいだ。
柳吉はうまい物に掛けると眼がなくて、「うまいもん屋」へしばしば蝶子を連れて行った。彼にいわせると、北にはうまいもんを食わせる店がなく、うまいもんは何といっても南に限るそうで、それも一流の店は駄目や、汚いことを言うようだが銭を捨てるだけの話、本真にうまいもん食いたかったら、「一ぺん俺の後へ随いて……」行くと、無論一流の店へははいらず、よくて高津の湯豆腐屋、下は夜店のドテ焼、粕饅頭から、戎橋筋そごう横「しる市」のどじょう汁と皮鯨汁、道頓堀相合橋東詰「出雲屋」