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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

06 夢幻の恋

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,447 字 · 21 页

青空文庫

「ほう、よい名じゃ喃」

お局は少し茶かし気味です。後ろの方で黙って見ている京姫の悪戯っ娘らしい眼がそう言わせたのかも知れません。

青侍の様子は全くからかわれるように出来て居りました。年はもう二十五六にもなるでしょうか、小さくて青白くて、そして男人形のようにツルリと渋皮の剥けた、言いようもなく綺麗な男だったのです。

「お局様、殿方禁断の庭へ入った上は、世上への見せしめ、精一杯懲らしめてやろうでは御座いませんか、その儘許しては、御台様への申訳が立ちません」

若くて悪戯っ気の多い腰元の一人――里美というのでしょう、京姫の意を迎えるように、斯う老女へ囁きました。

「如何にも尤も、この儘許しては、取締りの私の一分が立ちませぬ、それでは皆の衆」

「ハッ」

十幾人のお腰元、事あれかしと待って居たのが、パッと寄って来ると、村松金之助を八方から取囲み、

「狼藉者、神妙にしや」

口々に罵り乍ら、赤い襷、白い扱帯、黄色い帯止めと、あらゆる紐を四方から投げ掛け、恐れ入って蹲まる青侍を、あろうことか、キリキリと縛り上げてしまったのです。

「――――」

何時のまにやら、縁側に座を設けた京姫は、豊かに脇息を引寄せて、少し苦り切って、――その癖存分に面白そうに、美しい眉などを顰めてそれを眺めているではありませんか。