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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

11 運命の釦

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,033 字 · 22 页

青空文庫

「君は下らないモノを待っているんだね、出鱈目でも嘘八百でもせめて先生の同情に訴えて点数をかせぐ方が、白紙答案を出して落第するよりは学生として正当だよ」

「いや」

「待ちたまえ、君は一体行き当りばったり過ぎるよ。この世の中に偶然なんてものはあり得ないのだ。稀にあっても偶然はやはり偶然だ、断じて必然ではあり得ない。世の中のことは何時でも二二ンガ四で弾けるのだ、努力の蓄積以外に、成功はあり得ない。それを君は――」

「もう宜い、君の努力主義は飽々するほど聴かされているよ」

二人は面白くない心持で別れました。

が、その結果は全く予想外でした。笠森仙太郎は抜群の成績で進級し、丹波丹六はひどい点数で落第してしまったのです。

A教授は冷たい頭脳をもった若い学者で、白紙の答案に満点を与えるような茶気のある人ではなく、これは全く永久の謎でしたが、強いて理由をつけるならば、A教授が答案の点数を採点表に記入するとき、笠森仙太郎と丹波丹六の項を間違えたか、でなければ、名前を書き忘れた誰かの答案を、うっかり笠森仙太郎と誤認したか、場合は幾つか想像されないではありませんが、兎も角もその間に、恐ろしい偶然が支配していたことだけは疑いもありません。