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きぞくひがん
奇賊悲願
海野 十三
烏啼天駆シリーズ・3
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,375 字 · 19 页
「御免を蒙る。なぜだ。可哀想にお志万は、お前の出獄するのを指折りかぞえて待っていたんだぜ」
「それはどうも済みません、だが、兄貴の言葉にゃ従いかねる」
「お前はお志万が嫌いかい。はっきり返事をしなさい」
「お志万さんだけじゃねえ、僕は、およそ女と名のつくものが好きになれないんだ」
「ぷッ」烏啼はふきだした。「冗談も休み休みにいえ。若い男の癖に、女が嫌いなどと……」
「性に合わないから合わないというんですよ。お志万さん、御免よ、ね」
お志万は下俯向き、前垂をぎりぎりと噛んで、二三度肯いてみせる。その白い襟元の美しさに烏啼は目をやって、貫一の奴はどこかに欠陥があるのかなと思った。
「さあ、ここらで飯にしよう」
と、貫一は茶碗をお志万の方へ差出した。
貫一は、軽く二杯をかきこむと、急いで席を立とうとした。
「待て、貫一」
と烏啼は手をあげて停めた。
「僕は約束があるんだ。だから……」
「約束なんかないよ。ごま化すない。それよりも、おれはお前にいいつけることがある、さ、もう一度座りなよ」
「お志万さんのことなら、何度いっても駄目だ」
「そのことじゃねえ。商売のことさ。出獄したところでお前に一つ腕前を奮って貰わなくちゃ、烏啼天駆の弟で候のといっても、若い奴らが承知しねえ。