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「なら」にあそびて
「奈良」に遊びて
宮本 百合子
「女子文芸 第一巻第三号」1918(大正7)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,777 字 · 4 页
或る日、華厳宗の本山だという東大寺の転害門をくぐりました。その門は大きなもので、又鎌倉時代に、修繕されたとかで、当時の技巧の跡が残っています。そこを進みますと、道の両側の芝生が春の光を浴びてまだらに青ばんで来ているではありませんか。凝っと見ていると、翠の若草が、黄色い去年の草を蔽い隠してしまうかと疑われる程でした。私が若しも歌人でしたら、そこで幾首かは詠めたでしょう!
そこから又八幡神社を抜けて行くと、古い建物のあと――東塔といって昔七重の高塔で頗る壮麗なものであったという、その塔の跡のあたり芝原になっています。そして其処にはパチコが一面に咲いていました。香りこそないが、鈴のような恰好の白い花で、如何にも女性的な気分を現わしていました。私はそうした自然物のほとりから、奈良朝時代の記念物である大仏殿などを眺めたのでした。
(三)
春日山の奥の院から裏道に出ますと、大きな杉並木があります。成長しきったその老杉に対すると何となく総てを知りぬいてる古老にでも逢ったように感じられて、ツイ言葉でも懸けて見たくなるのです。
奈良朝時代の「奈良」