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おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
ついに朝之助が熟考にキリをつけた日が訪れ、その朝、正一郎の到着を待って、彼は娘と存八をも道場へ呼び集めた。彼は上段に正坐して三名をうち眺め、
「寺田よりの縁談は一応これを断ることに致すが、それについて一同の者に申しきかせておくことがある。そもそも当法神流の流祖楳本法神と申される御方はあまた日本に剣聖ある中に於ても特に神人と世人に仰がれ一世の崇敬を集められた未曾有の名人におわす。若冠十五にして富樫白生流の玄奥と気楽流の拳法をきわめ、それより数十年山野を跋渉して苦業鍛錬のあげく鬼神の霊動を会得され、また長崎に於てオランダ医学を学び人体の秘奥をさぐってこれを剣の理法に活用されたのである。晩年当地に土着してその秘法をことごとく須田房吉先生に伝えられたが、房吉先生また山野にこもって苦業し秘法を実地に見照して会得されるところがあったのである。当小山内の先祖はこの法神流三代を継いで今日に至ったが、余の代に至るまでともかく流祖の玄奥はこれを伝え得たかと思う。しかるに今日、わが日本は敗戦し、剣は国禁されて、余の門弟たるや諸氏らわずかに三名にすぎない」
朝之助は万感胸にせまったらしく、声をのんだ。