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おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
いつの間に上達したのか、てんで歯がたたない。第一、気組みがちがう。太刀筋の鋭さ、気合の充実、どこにもユルミがない。
その筈だ。存八は昨日と今日では人間が一変しているのである。存八にとっては思いもよらない朝之助の言葉だった。上達に見るべきものがあれば前科四犯のコソ泥でも歌子のムコにしてやると言明してくれたのだから、そのおどろきは寺田の比ではない。渡る世間にヒガミの数々をこめている存八は、いかに化け物屋敷の大将でもコソ泥すらも腕次第でムコにとるコンタンがあろうなぞとは考え及ぶはずがなかった。かりにもそんなことを考え及ぶ余地があれば、今までだってもっと稽古に身を入れたはずだ。ホシ芋とでも剣術しよう。
朝之助の本心が分ったから、にわかに人生に希望を得た存八、一瞬を境にして全くの別人になった。山林と田畑と屋敷と道場と、さらに絶世の美女を所有することができるのだから、四十二年間怠けつづけた根性がとたんに革命を起していた。
根が怠け者だけに、こうなると怖しい。勤労の限界を知らないからだ。他人はよほど働くものだと思いこんでいるから、これでも足りぬ、これでも足りぬと稽古にうちこむ。