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おんなけんし

女剣士

坂口 安吾

「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页

青空文庫

半死半生の目にあうのだから、気がのらなくとも真剣で、切実に身につけている。白刃の下で否応なく鍛えられたような充実がある。これに気合と妄執と不屈の闘志が加わったから、寺田の人智の計算ではもはやこれに抵抗する負ケン気をかりたてることができないのである。

「匹夫の勇には勝てねえや」

と、寺田は日ごとに諦める気持がつのった。毎朝、存八にしたたかブン殴られるのがバカバカしくなったのである。

「そんなにお嬢さんのムコになりたいかね」

寺田は存八をひやかして云った。

「当り前よ。前科者の宿なしが、これだけの屋敷と財産に合わせてあのお嬢さんをもらえるのだもの、山へこもって苦業して免許皆伝の名人になれるなら、今からでも山へこもって三年五年の苦業はいとわないね」

存八には懐疑がない。彼の希望も人生もスッキリと割りきれている。度しがたい匹夫だと寺田は心にののしったが、敗色はおおいがたい。心はひるむ一方だ。

「もう一チョウ、やろうよ」

「イヤだよ」

「まだ疲れやしないだろうね」

「イヤだ」

サイソクは存八で、断るのは寺田であった。以前の試合とちがって、面小手をつけて稽古するのだが、寺田の必死の虚実も、全然とどかない。