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おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
元々お金持の七兵衛は、盗んだ金をみんな人に施していた。彼の刑死はいたく人々に惜しまれ、むしろ義人として仰がれ、その屋敷跡はタタリを怖れる人々によって近年まで空地になっていたはずだ。
寺田はこれをやろうと決意したのである。歌子がいかに美女とはいえ、いずれは婆アになり、白骨になる女一匹ではないか。法神流がいかに人体の秘奥玄奥をきわめた武技であっても、たかが一発のピストルにすら負けるのだ。
しかし、彼がかく決意するに至ったのも、お化け屋敷のお化け人物に接したことが力となっていたことは否めない。相当の山林をもち、大きな屋敷と食うに事欠かぬ田畑をもちながら、前科四犯のコソ泥にでも家と娘をゆずる心になりうる人の思いつめた境地が寺田にも移り香を宿している。ゴミクズやウジムシどもの人生とちがって、まことの魂がまことに呼吸し生きている人生とはおそらくそのようなものだろう。寺田はそこにひかれずにいられない。それだけに、この人の魂の世界で彼が存八に敗れたのがバカバカしくて仕方がない。
別に存八その人に敗れたわけではない。存八自身はデクノボーだ。オレはあの人の魂に縁がなかっただけのことだ。