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おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
誰しも怪漢にピストルをつきつけられれば注意は相手の上体に向い、自身の構えも同じことで両足はお留守になっているところを、凄み一ツきかせずに思わぬ足の一撃だ。その足には靴をはいている。まともにこれを食った。唯々諾々と実に存分にくらったから、痛みを訴える呼び声すらも発することができない。急所を押えてフラフラと崩れてしまい、タタミをむしるようにもがきまわるだけである。寺田はそれには目をくれず、一同をハッタとにらんで、
「動くな。オレの言う通りにすれば、悪いようにはしない。郵便局へ行け」
ピストルを突きつけて家族と職員を郵便局に集め、壁に向って立たせた。あの急所にあれほど完全な一撃をくらうと、一番気丈な豪傑でも三分や五分は瀕死の重病人以上の行動はとることができない。三分と見ても、相当な時間だ。それを充分念頭に入れた寺田は自分で予想していたよりも落ちついていた。机の上を見まわす。現金はない。ヒキダシをあける。現金はない。机上に手さげ金庫がある。壁際に大きな金庫もある。
「金庫をあけろ」
大きな金庫をあけさせたが、そこにはいくらも現金がない。あるだけポケットへねじこんで、カバンからフロシキをだして手さげ金庫をつつんだ。