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おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
夏の水浴はたのしかった。しかし、他のことはみんなものうくて、やめてしまった。鍛錬もやめた。ついには悲願の石切りすらもやめた。食事だけはやめるわけにいかなかったが、鳥獣を屠って食う面倒をやめて、手近かな物、蛇や虫の有り合わせの物で間に合わせるようになった。沐浴からあがってくると、いつもうとうとと石上でうたたねばかりしている。腹がへると石から降りて、すぐ近い木のセミやトンボをつかまえる。蛙を追う。ねている石にとまるトンボも食うのである。
ある日、彼の足もとの地面がうごいた。おどろいて地をほると、山には珍しいモグラであった。彼は火をたいて丸焼きにして食った。実にうまい。長らく忘れていた肉の味を思いだしてホロリとしたのだ。おちぶれたな、と思った。ネグラの石にとまるトンボまで食うとは、おちぶれた。手近かな物、そして面倒のいらぬ物の最少限で間に合わせているが、それでも鳥獣を追っかける面倒よりはマシなのだ。そのくせ、ネグラの石にとまったトンボすら逃がすことが多い。トンボの後を見送って、また首を元に戻してうたたねする。おちぶれた。
「まア、いい。どうせオレは雑兵だ」