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おんなごころのつよければ

女心の強ければ

豊島 与志雄

「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页

青空文庫

「御免なさい。久しぶりだったものだから、すっかり話しこんでしまって……。」

そんなことはどうでもよく、長谷川はただ投げやりな気持ちで、酒の猪口を取り上げた。

「あなた、前からそんなに、お酒あがっていらしたの。それとも……。」

「それとも……なんですか。」

千代乃の眼に光りが湛えた。

「わたしとのこと、後悔なすってるんじゃないの。」

「どうしまして。光栄としてるんです。」

「冗談ぬきにしてよ。なんだか不機嫌そうね。」

「不機嫌どころか、これで、たいへん嬉しいんです。」

そんな言葉がすらすら出るのが、長谷川自身でも意外だった。たしかに、松月館とは気分が違っていた。

「今日は、真面目にお話したいことがあるのよ。だから……。水の音がちょっとうるさいわね。」

「なあに、聞きようですよ。僕はさっき、あれを聞きながら、うとうとしちゃった。あ、ここのお嫁さん、あなたの琴のお友だちですって。水音も、お琴の音みたいなもので……。」

「あら、こないだのことを言っていらっしゃるの。」

彼女は声を立てて笑った。

「あれ、わたしの策略よ。大成功だったわ。」

彼女はそれを独りで楽しむかのように、なかなか話さなかったが、いちど口を切ると、例の通り、明けすけにぶちまけてしまった。