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おんなごころのつよければ

女心の強ければ

豊島 与志雄

「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页

青空文庫

「実は、君にこの頃、恋人でも出来たらしいと、ちらと耳にしたことがあったが、僕は気にもとめなかった。すると、相手はあのひとだね。東京に出て来たのかい。君を追っかけて来たんだね。ねえ、打ち明けろよ。そんならそれと、松月館への返事の書きようもあったんだが……。」

「いや、さっきの通りの返事でいいんだ。」

長谷川はもう度胸をきめた気持ちになっていった。

「僕たち二人の間だけのことだ。ほかの者はどうだっていい。愛し合ってるんだ。いけないかい。」

「驚いたね。そんなこと、いけないかって、聞くやつがあるもんか。まあ落着いて、差支えない程度、僕に打ち明けてみないかね。」

「別に打ち明けることなんか、なんにもない。愛し合ってるだけで……ただそれだけさ。」

長谷川はなにか腹が立ってきた。勿論、石山に対してではなかった。何に対してだか訳が分らず、苛ら立たしいのである。

それがきっかけだったのであろうか。無謀なことをしてしまったのだ。

初めは、まだ時間が早かったせいか、客は僅かだったが、次第にこんできた。石山は知人もあるらしく、頭でうなづき合ったりした。

「そりゃあ、愛し合うのは君たちの自由だが……僕で役に立つことなら、いつでも相談にのるよ。