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おんなごころのつよければ
女心の強ければ
豊島 与志雄
「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页
「僕はちょっと、ここに残ってるよ。先に行ってくれ。」
石山はなんとも言わずに、長谷川の様子を眺め、一つ大きく吐息をして、そして立ち去った。
長谷川はうつろな眼で石山を見送り、それから頬杖をついて煙草を吹かしたが、それを半分きりで灰皿に突っこんだ。
地下室、と彼はまた意味もなく呟いた。そして立ち上った。突然、冷静に返った心地がした。
煙草の煙がだいぶ立ちこめ、スタンドの片端で、がらがらダイスを振ってる客があった。
長谷川は静かな足取りで、真直に柿沼のボックスの方へ行った。
七
長谷川は柿沼の横手につっ立ち、どういう風に言葉をかけようかと迷った。
柿沼は静かに顔を挙げて、長谷川を見た。その眼差しが初めはぼやけて、やがて焦点が定まってくる、そういう見方だった。
「長谷川さんですか。しばらくでした。」
頷くような軽い会釈をした。
「お一人ですか。」と長谷川は尋ねた。
「ええ、さあどうぞ。」
指された席へ、長谷川は彼と向き合って坐った。そして女給に、彼と同じ酒肴、ビールにハムにチーズを註文した。
そのことが、長谷川自身、なにか滑稽な感じを持たせた。どうして柿沼と同じ品をあつらえたのか。