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おんなごころのつよければ

女心の強ければ

豊島 与志雄

「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页

青空文庫

家庭においても、女房は単に長火鉢にすぎない。きまった場所に据えてありさえすれば、それで充分だ。奥さんが亡くなられたので、長火鉢がなくなった。だから、別な長火鉢が新たに必要になって……。」

「まあお待ちなさい。」

柿沼は長谷川を制して、かすかに皮肉の皺を頬に刻んだ。

「それは、あなたの言われる通りです。女房は家庭においては、一種の長火鉢にすぎないし、茶の間にじっと尻を据えておればよろしい。実際、わたしのような生活をしている者にとっては、茶の間に長火鉢が一つあることが大切で、それがつまり、家庭のしめくくりであり、家庭の慰安でさえもあります。いろり、という言葉の意味は、日本語にしても外国語にしても、あなたにはよくお分りのことと思います。それはまあそれとして、わたしは、亡くなった妻の常子にも、千代乃さんにも、またほかの二三の女にも、すっかり魅力を感じなくなりました。セックスの衰えから来たことかとも思いますが、そればかりではありません。女性というものは結局、男の活動の邪魔になり束縛になることを、多年の経験で知らされたのです。だから、家庭の中にあっては単なる長火鉢で結構、家庭の外にあっては単なる湯たんぽで結構……だが、長火鉢にせよ、湯たんぽにせよ、終始わたしの身辺について廻らないで、在るべき場所をはっきりきめておいて貰い