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おんなごころのつよければ
女心の強ければ
豊島 与志雄
「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页
」
「いや、そんなにきちんと坐っていなくったって、腰掛けても出来るよ。」
「拵えるだけなの。」
「そりゃあね、専門家だもの。」
「拵えるだけじゃあ、退屈よ、きっと。」
「それでは、どうすればいいんだい。」
「あたし、こぎれいな店も、一つほしいわ。」
「もちろん、店も出すのさ。」
「そんなら、賛成よ。そうしましょうか。」
敏子は母の方を、いたずらそうな眼付きで見た。母も振り向いた。
「お店の方は、千代乃さんに出して貰うんだね。あのひともきっと賛成するよ。」
「そうだ。千代乃姉さんをおだててみよう。でも、どうかしら。」
すべて、冗談ではあった。然し、そのあとで、へんに皆黙りこんだ。
それを機会に、長谷川は辞し去ることにした。
自分たちに好意を持ってる菊池親子と、この際、千代乃のことをなにかと話しあうのは、長谷川にとって心嬉しいことではあった。何の懸念もなくそのような話が出来る相手は、外に誰もなかった。けれども、また一方では、そういう相手だから却って、うち明けた話が憚られる点もあった。無用の心配はかけたくないのだ。
無用の心配、そのようなことが頭に浮ぶほど、長谷川はえたいの知れない危惧を感じ、なにか思い沈んでいた。