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おんなごころのつよければ

女心の強ければ

豊島 与志雄

「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页

青空文庫

――彼女は、芝公園の近くで自動車を降り、運転手に心附けも与えず、公園の中にはいって行き、人通りのないのを見計らって、コートの風呂敷包みを路傍に叩きつけた。自分自身が穢らわしかった。

その夜、彼女は柿沼への復讐を考えた。柿沼を殺してやろうかとも思った。ほんとに殺してやろうかと思った。なかなか眠られず、夜明け近くなってうとうとした……。

千代乃の飛び飛びの話を綴り合して、だいたい右のように、長谷川は理解した。

「それだけで、ほかになんにもなかったんですね。」

「ほかにって、どういうことですの。」

「いや、それだけのことなら、却ってさっぱりしていいじゃありませんか。柿沼さんらしいやり方だけれど、後腐れがなくていい。」

千代乃は刺すような眼付きを、長谷川に据えた。

「長谷川さん、あなたも、わたしをさげすんでいらっしゃるのね。そうでなければ、そんなこと仰言るわけはありません。」

「どうしてでしょう。僕にはよく分らないけれど……。」

「なぜ、ひとを騙して、お線香なんかあげさしたんですか。」

「別に騙したわけじゃなく、初めからそう言ったんでしょう。」

「銀行預金だの、家屋だの、出資だの、そんなことを、どうして言う必要がありますか。