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おんなごころのつよければ

女心の強ければ

豊島 与志雄

「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页

青空文庫

僕の郷里です。勿論、僕も行きます。淡路島……いい所ですよ。古い和歌にあるような、夢のような所ではないが、もっと現実的にのんびりしています。海に魚類の多いのは言うまでもないが、川には鮎がたくさんいるし、池には鯉がいくらでも育つし、鳴戸蜜柑は枝が折れるほど実るし……。」

中途で、彼自身、話の空疎なばかばかしさに気づいて、口を噤んだ。

千代乃は訝かしげに彼の顔色を窺った。

「淡路島もいいけれど、こんどのこと、うまくいきそうですよ。」

彼女の計画はだいぶ見込みが立っていた。

ある女学校の近くにある小さな文房具店が、店を閉めることになっているが、その店なら、彼女の資金で譲り受けられそうだった。経営がうまくゆくかどうか分らないが、とにかくやってみてからのことである。

これに、彼女はいちばん気乗りがしていた。二つの根拠があった。自分で商売をしてもいいし、働きに出てもいいと、あちこち物色してるうちに、敏子が勤めてるデパートで、文房具売場のひとが一人やめたので、そのあとなら、はいれるかも知れなかった。次に、先達ての人形の店の夢のような話で、伯母さん親子が作る人形を売るのも、楽しいことに思われた。