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じょせいのれきし
女性の歴史
宮本 百合子
文学にそって
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,758 字 · 43 页
自分の生命を、一たん否定して闘っても来ている。餓死する人間も見たであろうし、その人たち自身、栄養失調で這って帰って来たかも知れない。何故そこから新しい文学が生れないのだろうか。歴史的な野蛮行為のなかにまきこまれて、苦悩し、ひそかに泣き、人間らしさを恋うた心が一つもなかった、とどうして云えよう。それだのに、何故それを書いた小説は出ないのだろう。これほど愛を破壊された婦人がいるのに、何故その声がほとばしって来ないのだろう。これこそ、きょうの私どもの実に大きな問題であると思う。
文学が書かれるには、現象の記憶があるばかりでなく、自分がそれをどう見るか、どう考えるか、そこから何を受けとったかという一つの経験に対する複雑な人間的摂取を経なければならない。そこから小説は生れる。もしただ肉体で経験しただけで文学が出来るなら、あんなに苦しい思いをして三度も子供を産んだ婦人はだれでもそれについて立派な小説が書けるはずだとも云えよう。ところが肉体的な経験からだけではどんな小説も出来ない。平和的な人民の一人として、あの戦は本来どういうものであったか。日本の大衆の誰もが戦争の可否について議論し、一票を投じ、決心して参加した戦であったなら、その歴史的意義と個人の運命への影響を反省もし、そこから人間らしい何かをくみとることも可能な