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じょなん

女難

国木田 独歩

「文藝界」1903(明治36)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,695 字 · 45 页

青空文庫

なんの頭領だろうと思っていますうちに、その男はずかずか私の枕元に参りまして、

『お初にお目にかかります、私ことは大工助次郎と申しますもので、藤吉初めお俊がこれまでいろいろお世話様になりましたにつきましては、お礼の申し上げようもございません、別してお俊が厚いお情をこうむりました儀につきましては藤吉に代りまして私より十分の御礼を申し上げます。つきましては、お俊儀は今日ただ今より私が世話することになりましたにつきましては早速お宅を立ち退くことにいたします、さようあしからず御承知を願い置きます』と切り口上でベラベラとしゃべり立てました、私は文句が出ないのでございます。

それからお俊と頭領がどたばた荷ごしらいをするようでしたが、間もなくお俊が私の傍に参りまして、『いろいろわけがあるのだから、悪く思っちゃアいけませんよ、さようなら、お大事に』

二人は出て行きました。私は泣くこともわめくこともできません、これは皆な罰だと思いますと、母のやつれた姿や、孕んだまま置き去りにして来たお幸の姿などが眼の前に現われるのでございます。

役所は免められ、眼はとうとう片方が見えなくなり片方は少し見えても物の役には立たず、そのうち少しの貯蓄はなくなってしまいました。