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じょなん

女難

国木田 独歩

「文藝界」1903(明治36)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,695 字 · 45 页

青空文庫

「ヘイそうでございますか、イヤもう行き当りばったりで足の向き次第、国々を流して歩るくのでございますからどこでどなた様に逢いますことやら……」

途で二三の年若い男女に出遇った。軽雲一片月をかざしたのであたりはおぼろになった。手風琴の軽い調子が高い窓から響く。間もなく自分の宅に着いた。

三

縁辺に席を与えて、まず麦湯一杯、それから一曲を所望した。自分は尺八のことにはまるで素人であるから、彼が吹くその曲の善し悪し、彼の技の巧拙はわからないけれども、心をこめて吹くその音色の脈々としてわれに迫る時、われ知らず凄動したのである。泣かんか、泣くにはあまりに悲哀深し、吹く彼れはそもそもなんの感ずることなきか。

曲終れば、音を売るものの常として必ず笑み、必ず謙遜の言葉の二三を吐くなるに反して、彼は黙然として控え、今しもわが吹き終った音の虚空に消えゆく、消えゆきし、そのあとを逐うかと思わるるばかりであった。

自分は彼の言葉つき、その態度により、初めよりその身の上に潜める物語りのあるべきを想像していたから、遠慮なく切りだした。

「尺八は本式に稽古したのだろうか、失敬なことを聞くが」