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おんなぐつのあと
女靴の跡
宮本 百合子
「新女苑」1937(昭和12)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,954 字 · 4 页
ショウモンの大砲台の内部は見物出来るようになっていた。一行が降り立ったら、薄青色の制服をつけた二人のフランス兵がランターンを手に下げて来て案内した。
秋の黄昏に廃趾の番をしていた兵士たちの肩のあたりが淋しそうである。ショウモンの砲台にはヴェルダン司令部があった。
飲料の貯水池が砲台の奥にあって、撃破されたコンクリートの天井が黒い澱み水の上に墜ちかかっているのが、ランターンのちらつく不安定な灯かげの輪のなかに照らし出されて来る。
グーモンへ着いた時には、落ちかかると早い日が山容を濃く近く見せはじめた。朝夕の霜で末枯れはじめたいら草の小径をのぼってゆくと、茶色の石を脚の高さ二米ばかりの巨大な横長テーブルのような形に支えた建造物がある。近づいてこの厚い覆いを見れば、これはそれなりに記念碑であり又墓でもあった。石の屋根の下にいら草の繁みをわけて三十本あまり銃剣が地上に突出されたままになっている。ここで隊列を敷いていたフランス兵たちが生きながら瞬間に爆弾の土砂に埋められた。
更に一ヤードほど登った前方の草の間に、金の輪でも落ちているように光を放っているものがある。