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ようえい

妖影

大倉 燁子

「オール読物」文芸春秋、1934(昭和11)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,489 字 · 22 页

青空文庫

そして墓場まで送って家族累代の墓地に葬ってやりました。その墓場は田舎――私共は蘇州の者ですが――の淋しい畑の真中にありました。

棺に納めます時、私は娘が好んでいた純白の夜会服を着せてやりました。それは私がロンドンに居りました時、娘を始めて社交界に出すために、大金をかけてつくらせた記念の品でございました。それから娘に買ってやった宝石類、頸輪、腕輪、指輪、殊に指輪は全部の指にもはめきれないほど沢山有ったのを、私はみんな娘の身につけて葬ってやりました。親なんて実に馬鹿なもんでございますね」

お父さんはちょっと歎息するように私の顔を見て言葉を断った。私はお嬢さんの方を眼で指しながら訊いた。

「その方はこのお嬢さんのお姉さんなのですか?」

「まあどうぞ、終りまで聞いて下さい。――葬いを済ませてから家へ戻って来た私が、その時どんな気持だったか貴方にはお分りになりますか。妻は娘の小さい時に死にました。私は母親の分までも娘を可愛がって育ててきたのです。そして母のない娘は私一人を頼りにしていましたし、私には彼女以外に親身なものは一人もないのでございます。それですから娘を自分の生命よりも大切にしていた心持は十分にお察し下さると思います。