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つまにしつれんしたおとこ
妻に失恋した男
江戸川 乱歩
「産業経済新聞」1957(昭和32)年10月6日、13日、20日、27日、11月3日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,695 字 · 12 页
遺書らしいものは、いくら探しても発見されませんでした。
むろんピストルの出所が問題になりました。許可を受けて所持していたわけではなかったのです。これは戦争直後、南田の父親がアメリカ人からもらったもので、たまといっしょに机の引出しの奥にしまったまま、奥さんなどは忘れてしまっていたということでした。
密室の中の自殺で、ピストルは南田が右手に握ったままなのですから、これはもう少しも疑うところはありません。自殺にちがいないと判断されました。
いくら疑いのない情況でも、警察の仕事はそれで終るわけではありません。自殺の動機を調べてみなければならないのです。
わたしは奥さんにそれをたずねる役を引きうけました。事件の翌日、少し気のしずまるのを待って、南田家の茶の間でさし向かいになり、いろいろたずねてみました。
みや子さんは、南田があれほど恋したのも無理はないほど魅力のある女性でした。年は二十八才、南田が痩せっぽちの小男なのにくらべて、上背のある豊かなからだで、目のさめるような美しい人でした。
奥さんと話しているうちに、わたしは何か隠しているなという感じを受けました。