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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
「お茶でしょう。正ちゃんでなくちゃいけないの。」
例の切口上だった。貞子が「はああ」というような顔をして、ミネにおもいやりの目くばせをしたのを思いだす。そっとかばって、立ち直らせたいと気をつかうミネの心も知らぬかのように、閑子は感情の毒素のようなものを、他人の前にまでまき散らそうとしているようにさえ思えた。そんなことも思い出されて、むかむかしてきた。
「まるでさ、こんどのことが私のせいのようにあたりちらすのよ。頭が悪いったらほんとに、腹の立つ。」
閑子にはいえぬもやもやを、今はき出そうとするようにいい出すのを聞くと、きげんのよい悠吉は笑い出し、
「よせよ、お前までがヒステリーになっちゃかなわんよ。せっかく閑ちゃんのいない中こそのんきにしようよ。」
いいながらふとんの中にもぐった。
「ごめん、ほんとだわ。」
すぐ思い直したが、悠吉からそんな風にいわれるとまた閑子が可哀そうになった。こんな時間が閑子にはないのだ。どこへいってもないのだと思うと、閑子の感情が片輪になるのがわかるように思えた。しかし悠吉までがしばられていたのを思ってもう閑子のことは口にしまいと思った。