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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

リュウマチの千枝の姿が庭石をこちらへ渡ってくる。

「どうした。」

硝子をあけて迎え入れた。

「姉さん、ほんとに大変だったでしょ。」

あいさつもせずに、いきなり千枝はいった。涙をこぼしている。

「こん度はそっちが大変?」

「うん。」

千枝は大きくいきを入れ、正子のいれた茶におかわりを求めてそれをのみおわり、

「私が行って話しても、野村さんだめかしら。」

千枝の話では、閑子はどうしても野村が思い切れず、昨夜は手紙をかいて、千枝に相談したというのだ。

「それがまあ、恥かしいったら、あんな手紙みたら、反吐がでるわ。出さないようにいって、代りに私が話しにゆくからということにしたの。」

千枝は顔を赤らめながらその手紙について話すのだった。聞いていてミネも赤くなった。手紙には野村との夫婦生活の感激をむき出しの言葉で書いてあったという。閑子の上にようやく自然な気持のわき上ってきたとき、野村の熱情はさめてしまっていたというのだ。ミネは返事ができなかった。おそまきな生理のめざめ、それをなぜ育て花咲かすことが出来なかったろう。もうおそいのだ。問題は肉体を離れ、精神を見限っているのだ。