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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
女のくせに、といいながらも彼は妻をいたわる気持がわいたろう。イビキをカバアするものがあったにちがいないからだ。閑子にはそれがなかったのだ。それは雇い女がイビキをかくよりももっともっとおぞましいことだったろう。イビキをかく女、ああイビキをかく女、どんな原因でイビキは存在するのか。不幸なる女のイビキ。そういえば高木千恵子も疲れると男のように濶達なイビキをかいていた。千恵子の夫はそれをどう思っているだろう。貞子のはずっとしずかないかにも女らしいイビキだった。千恵子やミネや閑子のように肉づきのよすぎる女にイビキは大きく作用するのだろうか。野村と井川が膝つき合せて終日とつおいつ考えあぐんだという閑子のイビキは野村をねむれなくしたというのだから、とてつもないものだったのだろう。ミネは何ともいえずうとましい気がした。そのうとましさが野村への感情だけではなく、閑子やミネ自身へのものなのはかなしかった。
「イビキをかく女って小説かこうかな。」
自嘲的な口調でいってその手紙を悠吉の方にすべらせた。悠吉がよむ間に机の上の辞苑をぱらぱらとめくった。
いびき〔鼾〕(名)寝ている間に出る鼻息の音。