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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
そのはじめての現れが、正月にミネたち夫婦と三人で野村の家へゆこうということになった。野村が招待するという形でその訪問は行われた。悠吉は先約があったため、ミネは貞子と二人だけで出かけた。閑子にはどこへともいわず、年始回りのような顔をした。野村は牛肉を山のように買って待っていた。それは全く山のように竹の皮に盛り上っていた。豆腐や野菜やその他のものも豊富だった。まるでそれは十人の客を呼ぶほどの仰山さであった。ミネはある意地悪さでその牛肉の山をみている自分に気がついた。しかしその思いはさっとは消えなかった。ミネは閑子のいった言葉を思い出す。
「二泊の予定だったのに、一泊で帰ったでしょう。そのときね、牛肉を五十目買ってすきやきをしてたのよ。ちょうど私がお土産に百目買って帰ったのでそれも一しょにしたけれど、はっとしたの。いつだって私は百目以下買ったことなかったの。牛肉百目買って、ぜいたく? そんなことも気に入らなかったのじゃないかしら。」
そんなことをまでいい出して、閑子は自分を責めたのであった。牛肉を好きでない閑子の留守にどうして五十目しか買わなかったのか。