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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
御飯だけ御馳走になってから。」
「あら、二晩泊りじゃないの。」
「でも、もう元気になったんですもの。その代りまた来させてもらう。」
急にそわそわと帰り支度をする閑子へ、ミネは買っておいてくれと頼まれていた布団地の布を取出してやり、正子のいないのをみて聞いてみた。
「閑ちゃんたちの寝室は、書斎なの。」
閑子はちょっと暗い顔になり、
「ちがうのよ。私は子供と一しょ。」
ミネは呆れた顔で、
「ほんと。」と聞きかえした。
「そうよ。だって子供たちが一しょに寝ようって聞かないんですもの。」
「野村さんそれをだまってるの。」
「何にもいわないわ。」
ミネはすぐには返答も出来なかったが、小さい声で、
「それは間ちがいよ閑ちゃん。そういいなさいよ。」
「そんなこと。」
閑子は赤くなり、
「私は子供のお母さんであるつもりなの。だから家政婦よ。」
閑子が帰ったあと、ミネはそのことが心を離れなかった。何となく感じていた得体の知れぬものが、はっきりしたことで、不可解な野村の態度が心に戻ってきて、一そう胸の中が重たくなった。どうしたらよいだろう。考えれば考える程閑子の不幸の大きさが頭一ぱいにかぶさって、その夜は眠ることさえ出来ず、あぐんだ。