轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
ミネはひそかな反発を感じながら家への路地を曲った。反対の方から、旅人のようにリュック・サックを背負い、カバンを下げた女が近づいてくる。閑子だ。ミネは門のそばで待ちうけた。
「姉さん。」
閑子の声はしわがれていた。
「帰ってきたわ。だまって出てきたの。もうとめないでね。私、証拠をにぎってきたのだから誰が何といっても帰らないつもり。」
いっている中に閑子の声はふるえてきた。
「さあ、家へ入ろうよ。分った、分った。」
子供でもあやすようにいって、ミネはカバンを受けとり自分の仕事部屋に閑子をさそった。うしろからリュックをかかえて下してやると、閑子はしゃんと胸をはるようにしてこちらへ向き直り、立ったまま、
「前の奥さんは貴族のように美しくけだかかったんだってよ。そして私に、何にもいわずに引き下ってくれないかって、書いてあるの。日記よ。だから私、だまって帰ってきたわ。野村、明日伊豆へゆくんだって、私がいないと忽ち困るじゃないの。でも私、帰らないわよ。誰がひと、あんなところに。」
なげつけるようにいう。世間なみにもとへ帰れといわれ、帰ってきてくれとたのまれるもののように決めている閑子の単純さを辛く思いながら、ミネは言葉少く、うなずいていた。