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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

私たちがすればそれでいいじゃないの。」

すると閑子は急に目を光らせ、

「出戻りからお祝いをもらうの、ゲンが悪いというならやめるわ。」

「そんなこと、へんなふうにひがむのよしなさいよ。閑ちゃんが祝ってあげたい気持なら、そりゃあ喜ぶわよ。お祝いなんて羽織の紐一つだってうれしいものなんだから。」

「祝ってあげたいから祝うっていうのじゃないわ。わたしが姉さんたちの交際の仲間入りをしようって野心はないのよ。私ももらったんだから、お返しはしなくちゃならんでしょう。それだけよ。作家なんて偉い人たちとのおつき合いはもうこりこりよ。」

ミネはだまっていた。だまるよりほか仕方がない。そんな言葉のやりとりの結果、閑子は下駄を買ってきたのである。永年の田舎暮しの中では冠婚葬祭を義理と形式でしか考えない几帳面さなのだ。かつて自分も祝ってもらった義理は、どうでもこうでも果さねば気がすまないのだろう。そんな義理で買ってきた下駄なのだが、その時閑子は大自慢でそれをミネや正子に見せた。

「いいでしょう。これを朝子さんがはいて、蛇の目の傘をさしている姿が目に浮んできてね、こんな下駄がはける人は仕合せだと思ったわ。