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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
顔をみるのもいやということがある。それで野村は、閑子をのがれてここへ出かけてきたのか。ミネは自分を相手の立場におくことで、強いて野村を理解しようとした。と同時に、閑子の立場にも立たねばならない。しかし自分が閑子だったら……。はげしい思いが胸にたぎる。あのときミネは、思うさま悠吉の頬桁をひっぱたいた。ぱんぱんとはげしく頬が鳴った。思うさまミネは、相手の女の肩をつかまえて、力の限りゆさぶった。女の頭がぐらぐらとゆれ、髪が解けて肩に散った。それが解決のいと口になった。ああしかし、閑子にはそれはできまい。野村は閑子の前にも土下座的であったにちがいない。土下座を誰がたたくことができよう。
「ああ!」
急に野村が畳の上にあお向けにたおれた。涙があふれている。それを見られまいとあお向けになったのだろうに、涙は目がしらをあふれて耳をぬらしている。ミネも両手で顔をおおい、机に伏せて泣いた。閑子よ、あきらめておくれよ。野村さんは泣いているのだよ、男が泣いているのだ――。
幾時間をそうしていたろうか。とにかくお互いの友人である詩人の川原にも相談してみようということになって三人は出かけた。